写す
カメラは、対象物を映し出す道具だと誰かが語っていた。
でも、私にはそれだけではないような気がしてならない。
その写真とも、付き合いだして35年ぐらいになるだろうか?
しかし、写真の思い出をさかのぼると、もっと昔になる。
テレビの番組で「素晴らしい世界旅行」という番組が、小学生の時にOnAirされていた。
世界の様々なところにカメラが行き、私が知らない世界をムービーカメラで、たくさん見せてくれた。
だから、ヨットで世界を周り、いろんな事象をカメラに収めたいと、幼心に夢見たものだ。
その少年時代の思いが、今も脈々と生きずくようなところが私にはあって、さほど上手くもない還暦カメラ小僧であり続けている。
大学で学んだ抽象絵画とは、また違った魅力を、写真は教えてくれる。
「四季の刻々と変化する風景」「世間を揺るがす瞬間の世界」「快活に踊り乱舞する若者の様」「今は亡き友人の笑顔」「昆虫や動物たちの生ける世界」「無音となった空き家の粛々たる情景」「恋人たちの絶えない笑顔」。
その一瞬一瞬を描写する写真の表現世界。
この古びたCaf’eと私には、こんな昔語りがお似合いなのかもしれない。
今日も、新しいお客様と、昔からの常連様が、この店に集われた。
若者たちは、キラキラと輝き、壮年者たちは落ち着いた眼差しで、音楽とコーヒーを楽しむ。
そんな今を、コーヒーと共に、私は感謝する。