梅の花と、カウンター
梅が、咲いていた。
ささやかに、ひっそりと咲いている。
いつの季節や月日にも、思い出はあり、想いを馳せる。
梅の花での、出来事もある。
カウンターというのは、不思議なところだ。
その日、初めて入ってきたお客さまでも、話が弾んで様々なお話をされる。
普通に出会って、すぐに話す内容ではないのに。
いつも思うが、カウンターという境界をはさんで、人は心許されたかのように饒舌(じょうぜつ)になるようだ。
若かった時の話、仕事の話、恋愛での話、壮大な話も、笑えない話も、嬉しいことも、辛いことも、話される。
私は基本的に、お話をお聞きするだけだが、その話されるお方の人生が垣間みられ、機微(きび)の動きまで、透けて見えるかのようだ。
今年も「梅」が、咲いた。
「あのお方は、どのようにされているのか?」と、時節の変化や、事象で思い、想いだす。
桜咲く頃、草燃ゆる頃、蛍舞う頃、それぞれの季節にそれぞれの唄となり、今そこにある花の中に凝縮されていく。
梅の花は、静かに咲いている。